3月21日に1stアルバム『Sabriel』をリリースしたシンガーソングライターのSabriel(サブリエル)。弱冠23歳という若さでありながら深みのあるサウンドを生み出す注目のアーティストでありリリースされたアルバムについてもポジティブな評価が相次ぐSabrielの音楽性やキャリアを聞いた。

 

 Sabriel Interview

– まず差し支えなければ本名を教えていただけますか?

私の本名はSabriel Hobart。ラスヴェガス出身でSabrielのアーティストネームで活動してるわ。よく覚えやすい特徴のあるアーティストネームにしないのかって聞かれるんだけど、Sabriel Hobartという親につけてもらった美しい名前が大好きなの。素晴らしい名前を与えてくれた両親に感謝してるわ。

 

– ご両親ととても良い関係性のようですが音楽的にもご両親の影響がありましたか?

もちろんたくさんあったわ。両親は私が成長していく中でいろんな音楽を教えてくれたの。PrinceやStevie Wonder、Earth, Wind & Fireは生まれてから今までずっと聴き続けているアーティストよ。

 

– またラスヴェガス出身ということですが、ラスヴェガスという街があなたの音楽に及ぼした影響はありますか?

1930年代に私の曾祖母がラスヴェガスに移り住んで以来なので、私はこの街で生まれ育ったの。リアルタイムで味わったわけではないけど、かつての典型的なラスヴェガスの姿から音楽的にも影響を受けていると言えるんじゃないかしら。この街の古いネオンサインなんかを見ているとどこかタイムスリップしたような感覚になって、ノスタルジックなフィーリングを感じることがあるの。あと最近はヴェガスを少し違った角度からより深く見るようにしていて、砂漠の熱い夏とか乾燥した冬のような季節や天候が人々の感情にどのように影響を与えるかということにインスパイアされて曲を書くこともあるの。これだけ他のどの街にもないものを持っているユニークな街はないと思うわ。

 

 

– ラスヴェガスと言えばショーとエンターテイメントの街という印象があります。あなたもダンサーとして活動していたようですね。

3歳の時にダンスを初めて、パフォーミングアートスクールでダンスを専攻して高校までダンス漬けの毎日だったわ。それから高校生だった16歳の頃に最初に楽曲を作って発表したのがシンガーソングライターとしての初めての活動ね。どちらも若いうちにキャリアをスタートできて幸運だったと思うわ。

 

– 3歳から!それはまた早いですね。それだけ打ち込んでいたダンスからシンガーソングライターに転向したのはなんででしょう?またその経験が音楽に生きた側面を教えてください。

まず転向の理由について、ダンスはとても楽しかったんだけど、実はいつも心のどこかで歌いたいって思っていたの。子供の頃は常にパフォーマンスのことを考えていて、習うこと全てがステージに上がるためのことだったわ。高校で音楽を専攻するようになった時には既にステージ経験は豊富にあったから、踊ることから歌うことへの切り替えはすごくスムーズだったわ。既にステージ上が私にとっては快適な空間で、あとは切り替えるだけって感じだったからね。

それと、ダンスを通して音楽が人々にどんな影響を与えるかっていうのを身を以て感じられたのは大きな学びだったわね。ダンサーは音楽を聴いて湧き上がる感情を動きによって表現するんだけど、それは本当にパワフルなことだと思うわ。同時に音楽を聴くだけじゃなくて視覚化することも学んだわ。衣装や照明に囲まれることで音楽を色彩で表現することを学んだの。その経験のおかげで、ライブに来てくれた人たちにただ音楽を聴くだけでなくて視覚的にも楽しんでもらいたいと思うようになったわ。

 

– なるほど。そういったダンス経験から作られるステージは高く評価をされていますよね。その評価の現れだと思うんですがメイヤー・ホーソーンの前座を務めたと聞きましたが、それはどういうキッカケだったのでしょう?

「Life Is Beautiful Music Festival」という音楽フェスで同じラインナップだったんだけど、その主催者がMayer Hawthorneをホストとしてアフターパーティーを開くからそこで前座を務めてくれと頼まれたの。そのフェスでパフォーマンスできたのは最高だったわ。あとはSheryl Crowのオープニングアクトもやらせてもらったんだけど、Mayer Hawthorneの時と並んで本当にやりがいのある出来事だったわよ。Sheryl Crowは本当に素敵な人だったしMayer Hawthorneのショーも最高に楽しくて一生忘れられない経験になったわ。

 

 

– ではそろそろ音楽家Sabrielさんについてお聞きします。シンガーとしては誰に影響を受けたのでしょうか?エリカ・バドゥの影響が強いと感じたのですが。

んー、私の琴線に触れるシンガーは何人かいるけど、なかでもStevie Wonderがトップね。ヴォーカリストとして素晴らしいのはもちろんだけど、歌うこと全てに嘘偽りがなくてその感情の伝え方に引き込まれるわね。

でもそれ以外にもどんな時もアーティストが持っている才能を見つめるようにしているの。曲の中に隠されている本当の痛みや幸せを感じ取るのが好きで、Stevie WonderやD’Angelo、Erykah Baduのような私のお気に入りの全てのアーティストからそういったものを感じ取るようにしているからいろんなアーティストから影響を受けているように感じるかもしれないわね。

 

– 今回日本でリリースされるアルバム『Sabriel』は、『shä brē el』(2016年)と『B-Sides』(2017年)という2枚のEPから抜粋した内容となっています。それぞれどんなテーマで作られたのでしょう?

『shä brē el』は私にとって素晴らしいターニングポイントになった1枚よ。いろんな手法、音を使って実験的なことを始めたかったから思いついたアイデアをたくさんやってみたの。たとえば“Lovely Way”ではたくさんの古いピンボールマシーンの音を録音してどうゆう音ができるか実験したりね。とてもクールな音が作れたと思うわ!初めて自分で一生懸命挑戦して作ったEPだからとても気に入っているわ!

『B-Sides』は“Star”みたいにもともとBETの「FOX」や「Rebel」といった映画やTVショー用に使われた曲で構成されているの。アーティストとしての私の音楽性とは違うものだけど、みんなからの評判も良かったし、私自身のB-Side=“裏の顔”としてリリースすることにしたの。今後『B-Sides』に収録されているような楽曲をどのくらい作るかはわからないけど、異なったジャンルの音楽に触れること自体がとてもいい経験になったわ。

 

– 2017年の『B-Sides』ではアンビエントなカラーが強まりますが、このEPを手掛けたCoStarsは3LWやファンテイジアなどを手がけていた人たちですよね? CoStarsとはどんな繋がりがあるのですか?

もともと映画やTV用の音楽産業にも興味があったんだけど、はっきりとしたきっかけがあったというより気づいたら彼らと一緒に仕事をしていた感じなの。曲のテイストについては彼らからまず長い楽曲リストが送られてきて、私が歌詞とメロディーを付けて返していくっていうスタイルで作ったわね。それをBETの「FOX」や「Rebel」といったTVショーが買うかとどうかを最終的には音楽監督が気に入るかどうかで決めるんだけど、私たちの楽曲は運良く気に入ってもらえたの!世界に対して私の作品を紹介するいい機会になったわ。

 

 

– バックトラックの演奏や共作しているHalsey HarkinsとZachary Porter、Pao Gonzalezとはどういう関係性なんですか?

EP『shä brē el』では本当にクールなミュージシャンたちと一緒に演奏したわ。みんな才能があって尊敬できる人たちばかりよ。彼らと作曲したりレコーディングしたりするのは本当に快適で、その快適さは私にとっていい音楽を生み出すために欠かせない大切なものなの。ソングライター達と胸襟を開いて接することができるのはとても良いことなんだけど、信頼できるそんな人たちを見つけるのは本当に大変なことだから私は恵まれているわね。

 

– では最後の質問ですが、ご自身の音楽を一言で言い表すと?

んー、難しい質問ね。私たちは全てが定義づけられている世界で生きているわ。私にとっては「どんな種類(ジャンル)の音楽をやっているの?」って聞かれることもその定義づけの一つよ。本当はそこから解放されたいとも思うんだけど、ソウルとかネオソウルのアーティストを影響源として答えるようにしているわ。ジャンルとか系統とかにカテゴライズして共通言語を持たないと人と意見交換をしづらいってことも理解しているからね。でも影響源としてはネオソウルだけど、そこから作られる音楽に終わりはないの。いつかみんながありのままの形をそのまま受け入れられて、楽曲がカテゴライズされない世界を経験してみたいわね。世界はもう十分に分断されているわ。音楽によって私たち自身を分けることはやめて、一つになるべきよ。