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ノルウェーの新星Nosizwe(ノシズウェ)。ノルウェー最大級の音楽フェス、ØyafestivalenとTrænaに相次いで出演するなど人気、実力共に急上昇する最中、満を持してリリースされる『In Fragments』の日本盤発売を1/18に控えた彼女。

記念すべきデビューアルバムとなる本作には、これまでにErykah Badu、Bilal、Kendrick Lamar、Madlib、Mos Defら錚々たる顔ぶれと共演してきたGeorgia Anne Muldrowがプロデューサーとして参加。メッセージ性の強いNosizweの世界観を、Muldrowは色鮮やかなエレクトロニック・ソウルの名盤へと導いた。

デトロイトの人気ラッパー・Guilty SimpsonやDenmark Vessey、ハードバップジャズの大物Rene McLeanなど第一線で活躍する様々なアーティストも参加した本作。今の「モード」とも言える、ソウル・ミュージックをベースに、エレクトロニカ、ジャズ、ヒップホップが巧みに融合したサウンドはリスナーの耳を心地よく刺激する、デビュー作にして決定盤と言えるような一枚となっている。

その注目の1枚を生み出したNosizweにインタビュー。ジョージア・アン・マルドロウとの制作の様子や彼女の音楽ルーツなどを語ってもらった。

– まずはあなたのことについていくつかお聞きします。現在の拠点はノルウェーのオスロですよね?

そうよ!10年前にオスロに戻ってきて2、3年経つわ。

 

– Nosizweという名前は「民族の母」という意味だそうですが、南アフリカ人の両親の元に生まれ、ノルウェーで生まれ育ったあなたのバックグラウンドについて、少しお話しいただけますか?

私の母は幼い頃に南アフリカを出てノルウェーに辿り着いたそうなの。偶然にも20年後、私も母と同じような道を歩むことになったわね。南アフリカが民主主義になる1994年まではノルウェーに住んでいたんだけど、それから20代前半までを南アフリカで過ごして、いろんなところを転々とするようになったわ。ノルウェーと南アフリカ、幸運にもこの2つの素晴らしい場所を故郷にすることができたわ。

今拠点にしているノルウェーは本当に安全な国なの。それにしっかりと四季があるのが大好きで、天候がどれだけ人に影響を与えるか身をもって感じるわ。ノルウェーで活動していると、時々いい意味で世界の流れとは隔離されて生きられていると感じることもあるわね。

 

 

– 世界各地をわたり歩かれたということですが、どんな音楽を聴いて育ったか、どんなアーティストに影響を受けたか、音楽的バックグラウンドについて教えてもらえますか?

音楽の聴き方は本当に今までずっと雑食で、いろんなタイプのソウルやR&Bに夢中になってきたわ。5人の兄がいたこともあって、パンクからレゲエまでいろんな音楽が常に家で流れていたの。なかでもNina SimoneやSadeは家族みんな大好きで、私にとって今もずっと大好きなアーティストよ。

ヒップホップからも影響を受けていて、ヒップホップという音楽そのものやカルチャー自体が大好きなの。なかでもLauryn Hillの『The Miseducation of Lauryn Hill』は私の人生を変えた1枚ね。2000年代の音楽は本当に素晴らしいものばかりで、D’Angelo『Voodoo』、Erykah Badu『Mama’s Gun』、Jill Scott『Who is Jill Scott?』は私の青春のサウンドトラックで、今私が作る音楽にも大きな影響を与えているのは間違いないわね。ケープタウンのドラムンベースシーンでも活動していたこともあるくらいクラブシーンにもドップリはまっていて、Janet JacksonやProdigyを聞いて本当にいつも踊りまくっていたわ!

 

– シンガーとしてはいつ頃から活動しているんですか?

自分で歌い始めたのは幼い頃に聖歌隊に入ってからね。それから聖歌隊は大学に入るまで続けて、その頃からMadconやPaperboysといったノルウェーのアーティストのバックヴォーカルとして働き始めたの。ゆっくりだったけど着実に自分自身の音楽に真剣に向き合うようになったわ。Skunk AnansieのSkinをお手本にしながら、従来の枠の中に縮こまってしまわないで自分を表現するようにしているの。

 

 

– それではアルバムについていくつか聞かせてください。アルバム・タイトルの『In Fragments』にはどんな意味が込められているのでしょうか? アルバムのコンセプトも含めて教えてください。

このタイトルは、バランス感覚を持って生きるために人生の全体像を掴もうとする時に、私たちみんなが直面するものについて言及しているの。いつだったか忘れたけど、母が『Life in Fragments: Essays in postmodern Morality』という本を読んでいて、そのタイトルを見た時、『in Fragments(断片的に)』という言葉に深く共鳴したわ。断片化されたそれぞれの瞬間にも意味があって、それ自体にストーリーもあるの。それぞれの断片が私の人生を切り取ったモザイクの一部っていうことね。そういった断片によって形成された私自身の人生を搔い摘んで音にして伝えようとしているの。

 

– ジョージア・アン・マルドロウの全面プロデュースとなりますが、彼女とは、いつ、どういうキッカケで出会ったのでしょうか? また、どんな部分に惹かれたのでしょうか?

マネージャーのTorstein Haavorsenがレコード収集の遠征に行った時に私の一番のお気に入りアルバムGeorgia Anne Muldrow『Olesi: Fragments Of An Earth』を買ってきたの。その時に、「Georgiaは私が一緒に仕事をしてみたいトップ3に入るプロデューサーよ」っていうのを夢中で話したところ、彼がコンタクトをとってくれて実現したの。

彼女の音楽はまるで魔法だわ!それぞれの曲に独自の宇宙が広がっている感じなの。予期しないところで休符がはいったり、半拍ずらしたり、躊躇なくジャンルを超越したり……とにかく大胆で、彼女のビートメイキングも美しいモザイクのように感じるわね。いつも大きな影響を与えてくれる存在で、デビューアルバムを彼女と一緒に作ることができたのは私の人生においてとても大きな転機になったわ。本当に仲良くもなったしね。そういった意味でも私たち2人のコラボレーションはしっくりきたわ。

 

 

– スキットやアカペラを除いて、全てジョージア・アン・マルドロウとあなたの共作ですが、彼女とはどんな風に作業が進められていくのでしょうか? また、どんな音楽を目指しましたか?

ほとんどのパートにおいてGeorgiaがデモやビートを聴かせてくれて、その中から私が感じるものを選んだわ。共作の“The Best Drug”を除いて全楽曲の詞とメロディーは私が書いてるわね。あとAnders TjoreとØyvind Gundersenという2人のノルウェー人プロデューサーも招いてるの。彼らはビートで形成されたGeorgiaの大胆で独特なサウンドをまとめあげるのに不可欠な存在だったわね。

– 最後に客演しているGuilty Simpson、Rene、Naima Mclean、Son of Light、Kinny、Denmark Vesseyは、それぞれどういうキッカケで参加することになったのか教えてください。

Naimaは私の古くからの親友なの。ラッキーなことに、彼女は素晴らしい詩人であり、パフォーマーであり、社会運動家でもあるの。Son of Lightも同じように親友で、これまで何度も一緒に仕事してきた仲よ。だからまずこの2人に本作に参加してほしいって思ったのは自然な流れだったわ。

KinnyはSon of Lightと過去に一緒に仕事をしたことがあって、Sonにデモを数曲聴かせたところKinnyを参加させようと誘ってくれたの。Guilty SimpsonはTorsteinがとコネクションを持っていてコラボが実現したんだけど、本当に完璧にフィットしたわ。

そしてRene Mcleanはジャズミュージシャンとして有名だけど、偶然にもNaimaのお父さんでもあるの。ずっと彼のことをリスペクトしていて、“Breathe”ができた時、真っ先に彼に演奏してもらえないか頼んだわ。Denmark Vesseyはクレバーで魅力的なラッパーでレーベルメイトなんだけど、彼に参加してもらえたことは本当に光栄だったわ。“Breathe”は、たくさんの共演者やいろんな手法を使って一番時間をかけて完成させた曲よ。

いよいよ発売まであと1週間を切ったNosizweの『In Fragments』。ジョージア・アン・マルドロウとともに作り上げた傑作をぜひその耳で感じて欲しい。