Make The Change Project

 
INTERVIEW 2015.4.24

時代や国境を越えてリスナーを繋ぐ敏腕バイヤーが見た日米の音楽文化

日本の音楽シーンというのは
本来非常に面白いんです

「外国人のアーティストやお客さんと直接自分の言葉で話せないのが悔しかったんですよ」
10年勤めたHMVを休職し、ロサンゼルスへの留学を決めた堀内氏は留学の理由をこう語る。1年の留学生活から昨年帰国すると、2014年8月にオープンしアナログ盤の発売など大きな話題を呼んでいるフラッグシップ店HMV渋谷のバイヤーとして復帰。元来の音楽への情熱と確かな耳にその英語力も新たな武器に加え、アナログ盤の買い付けにアメリカまで趣くなど必要不可欠な存在として活躍している。

そんな堀内氏はロサンゼルスでの暮らしをこう振り返った。

「ロサンゼルスっていう街は本当に音楽に対して寛容で、歩いている人がいきなり歌いだしたり、とにかく音楽がありふれていましたね。住んでいた家のすぐ近くに小さなライブハウスがあったんですが、アメリカに着いた当日はArctic Monkeys、次の日はKornが来るって書いてあって……もう衝撃ですよ(笑)」

日常のいたるところに音楽が当たり前に存在し、世界的アーティスト達の音楽を感じることも容易に出来る。そんなロサンゼルスでの経験を経て、日本の音楽シーンの可能性や特殊性を改めて感じたという。

「日本の音楽シーンというのは本来非常に面白いんです。アメリカとヨーロッパの中間に位置しているからか、アメリカでは全然知られていないようなヨーロッパのアーティストが日本ではめちゃくちゃ売れていたりしますからね。日本のCDショップに外国人のお客さんの姿を良く見かけるのもこういった特徴が面白いからだと思います」

バイヤーとして多くの新作を毎日聞くという堀内氏だが、こんなに面白い音楽がまだ世の中にはあるんだという発見が日々あると語る。音楽大国と呼ばれる日本の音楽シーンには古今東西、世界中の良質な音楽に触れるチャンスが存在しているのだ。

堀内学 - HMV record shop 渋谷

新しくても古くてもいいものはいい。
いいもの同士を繋げるのが僕らの仕事

そんな恵まれた土壌において、更に深く音楽を楽しんでもらうための環境がHMV渋谷には揃っている。

「うちの店舗の特徴であり強みは中古のCDやアナログ盤がたくさんあること。もちろん新譜も置いてあるので、新譜を聞いた人が昔の音楽を聞いて、逆に昔の音楽を聞いた人が新譜をチェック出来る。そんな環境が整っていますし、それが大きな狙いでもあります」

このHMV渋谷の特徴は堀内氏の信念にも繋がっているようだ。

「中古でも初めて聞いた人にとっては新譜と同じなんですよ。新しくても古くてもいいものはいい。いいもの同士をきちんと繋げるのが僕らの仕事であって醍醐味でもありますから」

時代や国境を越えた「音楽」という共通言語を扱うプロとしての信念であり、「いい音楽を多くの人に届けたい」という堀内氏の強い思いが感じられた。

このように多様な音楽を受け入れる土壌がある一方で、日本発の音楽においてはこんな課題を口にした。

「日本から発信する音楽というのはあくまで日本国内でだけ消費されていることが本当に多い。アメリカにいて日本の音楽に触れる機会って本当に少なかったし、日本のオススメの音楽を教えてくれよって聞かれた時に、すぐに答えられるアーティストがほとんど出てこなかったんですよね。これが凄く残念で、どうにか変えたいと思いました」

日本の一部の文化が世界で受け入れられていく反面、ガラパゴス化が進行していると言われる音楽シーンの現状を打破する世界水準で音楽を作るアーティストが出てきて欲しい、そういったアーティストを後押ししたいという意志がその言葉には正直に現れていた。

堀内学 - HMV record shop 渋谷

法人も何も関係なく全店で協力して
渋谷を盛り上げたい

そんな潜在的な日本の音楽シーンがはらむ課題はあれど、2014年はアナログレコードの売上増加やHMV渋谷のオープンなどいいニュースが続いた一年だったと堀内氏は言う。現場に生きるバイヤーとしての感性がシーンの興隆への糸口を感じているようだ。

そんな上昇気流に乗りつつあるシーンを後押しするための秘策を伺うと、こんな答えが返ってきた。

「音楽シーンを作るという意味では、ショップで働く人間はみんな同じ方向を向いているはずなんです。だから、法人も何も関係なく全店で協力して渋谷の音楽シーンを盛り上げるようなキャンペーンをやったりしたいですよね。単純ではありますけど渋谷の各レコードストアを跨いだスタンプカードや特典を作ったりしたらもっと街全体が盛り上がるんじゃないかなって」

音楽が国境や言語の壁を越えて世界中で愛されるように、音楽を愛する人として音楽のために手を取り合うこと。シンプルながら、いい音楽シーンを作っていきたいという願いと筋の通った意志をかいま見た瞬間だった。

そして最後にMake the Change Projectについてはこんなエールを送ってくれた。

「このプロジェクトは面白いですよ。これからいろいろ壁が出てくると思いますけど、とにかく続けて欲しい。面白いことをすることも大事だけど、継続していくことが大切ですから。僕に出来ることはお手伝いさせて頂きますので」

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PROFILE

堀内学HMV record shop 渋谷

2014年に復活を遂げると、大規模なレコード販売などで大きな話題を呼んだHMV record shop 渋谷のトップバイヤー。10年勤めたHMVを一時休職しアメリカへ留学後、HMVヘ復帰するとすぐに新店HMV record shop 渋谷の立ち上げに携わり、目玉でもあるレコードの買い付けに再渡米するなど活躍を続けている。

HMV record shop 渋谷 (渋谷区宇田川町36-2 ノア渋谷1F / 11:00〜22:00)

INFO

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